ファイバブラッググレーティング(FBG)は、光ファイバのコアに作りこまれた数ミリメートル長の微細構造体です。これは、位相マスクを使用してファイバのコアにUVレーザビームを照射し、干渉パターンを生成したものです。これにより、シリカマトリックスの物理特性が恒久的に変化します(図1)。この加工は、周期的屈折率変調により、共鳴構造を作るものです。
一次被覆で保護された、光ファイバの直径は250マイクロメートルですが、この被覆がなければ、ファイバの直径は125マイクロメートルになります。光は、直径が約8マイクロメートルのコア内を移動します。
この技術の大きな利点の1つが多重化です。数多くのFBGセンサを1本の光ファイバに接続でき、わずか数mmしか離れていない近接測定でも、数km離れた遠距離測定でも可能です(図5)。優れた素材を採用した微細加工のグレーティングは温度やひずみだけでなく、圧力や加速度、変位も感知でき、多機能アレイとして機能します。すべてのセンサが1つの光源でサポートされることは重要です。1本のファイバに接続するセンサの数を増やしても、十分なスぺクトルバンド幅が確保されていればロスはほとんどなく、クロストークもありません(図6)。
光ファイバ式センサの中でもブラッグ格子グレーティングをもつFBG型には次のような特長があります:ファイバが長くなってもデータの損失がないこと、電磁ノイズや無線周波干渉がないこと、小型で軽量であること、危険物質が存在する環境でも本質的に安全な動作が可能であること、感度の高さ、長期的信頼性が主な特長です。さらにFBG技術ならではの多重化、参照信号を必要とせず計測の絶対値を提供できる点もメリットの1つです。
光ファイバ式センサを使用したひずみ測定の基礎に関する正確な概念を理解するための、技術用語をまとめた実用的なガイドです。
FBGは波長を選択できる反射鏡のような役割をする回折格子(グレーティング)を形成しています。広帯域の光源から光がファイバに入射されると、ブラッグ波長を中心とした非常に狭帯域な光だけがグレーティング反射され、他の光は透過して、光損失が一切なく隣接のグレーティングに進入します。FBGは対称構造で、光の進入方向に関わらず、常にブラッグ波長だけを反射します。
ブラッグ波長(λB)は主にグレーティングの周期(Λ)とコアの屈折率(nef)により定義されます。
FBGはユニークな特性をもつセンサです。ファイバが伸縮するとFBGはひずみを計測します。この現象は主に光ファイバの変化によりグレーティングの周期が変化し、結果としてブラッグ波長が変化することによるものです。光弾性効果により屈折率が変わることも要因となります。
熱感度はFBGに固有のものです。この場合、ブラッグ波長の変化の主な要因はシリカ屈折率の変化であり、熱光学効果によるものです。グレーティングの周期が変化するための熱膨張も要因とはなりますが、シリカの熱膨張係数は小さいため、影響は限定的です。
FBGのひずみ依存性は波長の変化により判断できます:
各記号の定義:
ßε – グレーティングのひずみ感度
pe – 光弾性係数(軸力に伴う屈折率の変化
光ファイバのpe は 次の通りです:
すなわち、FBGのひずみ感度は次の方程式で求められます:
FBG @1550 nm の場合は次のようになります:
光ファイバ式ひずみゲージとは?1本のセンサにひずみ、温度、加速度、変位など、多様なセンサを接続でき、大型構造物/インフラ監視を効率化【その原理と使い方】
FBGのひずみ依存性と同じく、波長の変化により温度依存性を判断できます (Equation 1):
各記号の定義:
α – ファイバの熱膨張係数
ζ– 熱光学係数(温度屈折率に依存)
熱感度の概算値を求める場合、これらの値は温度範囲に対する定数と仮定します:
α= 0.55x10-6/ºC
ζ= 5.77 x10-6/ºC すなわち熱感度の概算値は次の方程式で求められます:
FBG @1550 nm の場合は次の通りです: